生理のはなし
生理痛や生理不順などで悩みを抱えている女性は多いもの。つらい症状をがまんしているケースも目立ちます。私自身も社会人になってから辛い生理痛に悩まされてきました。長くつきあっていかなくてはならない生理。知識を深め、少しでも快適に過ごせるように身に付けていけたらいいですね。
女性ホルモンバランスプランナー®の石井理夏(あやか)
生理って?
「生理」という言葉がよく使われますが、正式には「月経」といいます。
女性のからだは妊娠に向け、毎月お腹の中で赤ちゃんを育てる準備をしています。
子宮の内側に子宮内膜という血管や分泌腺をたくさん含んだ組織があります。子宮内膜は赤ちゃんができた時にベッドになる部分です。
このベッドである子宮内膜は、受精卵を育てるためにだんだんと厚くなります。しかし受精しなかった場合は、古くなった子宮内膜に栄養を送っていた血管が収縮します。そうすると血液がいかなくなり、自然と剥がれ落ち膣を通って外へ排出されます。これが「生理」です。
小学校高学年くらいになると、からだが成熟し、妊娠や出産するための機能が整い生理が始まります。
生理は50代半ばに閉経を迎えるまでの数十年間、毎月同じことが繰り返されます。
女性の一生でみると、平均で35~40年間。毎月5日の生理期間があるとすると、生涯で6年半以上生理があることになります。
1か月のリズム
生理(月経)を起点に約1か月のサイクルで、女性ホルモンのエストロゲンやプロゲステロンの二つのホルモンの波の変化により体調が左右されます。
排卵前… 安定期(卵胞期) | エストロゲンが優位にたち、お肌の状態はよく、精神的にも安定しています。 |
排卵後… 不安定期(黄体期) | 排卵後はプロゲステロンが優位になり、妊娠の準備をし始めます。 この時期は体温が高くなり、胸の張り、むくみ、イライラなど、身体的にも精神的にも不調が起こりやすくなります。 |
生理の期間と経血の量
普通の日 | 子宮内膜が浮き上がる 妊娠をしなかった場合はプロゲステロンの分泌量が減り、妊娠の準備で厚くなっていた子宮内膜がはがれ始めます。 |
多い日 | 子宮内膜が剥がれ落ちる プロゲステロンの分泌量が減っていくと、内膜がはがれおちていきます。はがれおちるときが最も痛みを強く感じ、経血の量も増えます。 |
少ない日 | 古い内膜がすべて出ていく はがれおちた子宮内膜が3日から7日ほどかけて出ていきます。はがれおちたものなので、痛みはほとんどなく、経血の量も少ないです。 |
生理がもたらす症状
おりもの
おりものは、膣や子宮頸管(膣から子宮腔をつなぐ管)からの様々な分泌液と、膣壁の古い細胞が混ざり合った液体のことです。
おりものの量や状態は、女性ホルモンと密接なかかわりがあり、生理周期のなかで変化します。おりものは、膣の環境を整える、浄化する、精子を受け入れやすくするなど女性の体にとってとても大切な役割を果たしています。
おりもののサイクル
年齢とおりものの量
思春期 | 初潮を迎え、ホルモンバランスが不安定な状態のため、日によって多かったり少なかったりします。 |
20代~30代前半 | 女性ホルモンの分泌がピークを迎え、身体的に最も出産に適した年代となり、おりものの量が増えます。 |
30代後半~40代 | 閉経にむけて女性ホルモンの分泌が減少していきますので、おりものの量も減ってきます。 |
閉経後 | 女性ホルモンがほとんど分泌されないため、おりものの量はかなり少なくなります。 |
デリケートゾーンの不快感
生理中は肌が敏感になり、デリケートゾーンに不快感を感じることが多くなります。少しの刺激でもかぶれたり、ムレたりします。
特に、疲れている時やストレスを感じている時は、皮膚の抵抗力が弱まるため、デリケートゾーンがかぶれたり、かゆくなったりすることが多いようです。
生理痛
受精しなかった場合、子宮内膜がはがれ落ち、経血とともに体外に排出されます。その際にプロスタグランジンという痛みのもとが子宮を収縮させます。
生理痛がひどい場合はこのプロスタグランジンが過剰に分泌されている可能性があります。
また、出産を経験していない女性の場合、経血がスムーズに流れにくいことがあります。そのほか、冷え症、ストレスもストレスも原因となります。
生理痛を和らげる方法
生理前後の身体に優しい栄養素
ビタミンB6
神経伝達物質の補酵素として働くことで生理痛の症状が和らぐと言われています。
また、女性ホルモンであるエストロゲンの代謝、細胞の新陳代謝を促し、美肌にも効果があります。PMSや妊娠前期の悪阻にも効果的です。
ビタミンB6が豊富な食材…マグロ、さんま、鮭、かつお、サバ、レバー、銀杏、ピスタチオ、にんにく、バナナ、鶏肉
ビタミンE
ビタミンEには、血管を拡張して血流を良くし、ホルモン分泌を正常にする働きがあります。また、強い抗酸化作用があり「老化防止のビタミン」と言われています。
ビタミンEが豊富な食材…アーモンド、落花生、ごま、納豆、モロヘイヤ、うなぎ、抹茶
ビタミンC
ビタミンEやBの吸収を助ける働きをします。
ただし、ビタミンCは摂取してもすぐに体外へ排出されてしまうので、こまめに補給することが大切です。また、ストレスの緩和や、美肌効果のある女性に嬉しい栄養素です。
ビタミンCが豊富な食材…グレープフルーツ、キウイ、アセロラ、イチゴ、のり、かぶ、ゴーヤ、ブロッコリー
ビタミンB1
神経の働きを正常化し、ストレスに対抗する力が付きます。
強くストレスを受けるとホルモン分泌をコントロールしている自律神経の働きが鈍くなります。それに伴い血流が悪くなり冷えが起こって生理痛の悪化につながります。
ビタミンB1はイライラも防止でき、糖質を分解してエネルギーにするためダイエット効果もあります。
ビタミンB1が豊富な食材…豚ヒレ肉、大豆、たらこ、大麦
カルシウム
カルシウムは神経伝達に関与し、不足するとイライラしやすくなります。ストレスなどで体外に排出されたり、吸収が悪くなったりするので要注意です。
カルシウムが豊富な食材…ヨーグルト、牛乳、小松菜、チーズ、小魚、海藻、緑黄色野菜、ひじき
DHA
魚の油に含まれている必須脂肪酸です。血液循環を良くし、ホルモン分泌の補助をする働きがあります。
DHAが豊富な食材…イワシ、さんま、マグロ、サバ
鉄分
生理中は鉄分が不足しやすくなります。貧血状態になると体が冷えやすくなります。
鉄分が豊富な食材…いわし・カツオ・牡蠣・レバー・ほうれん草・小松菜
大豆製品
女性ホルモンのエストロゲンと似た働きをします。コレステロールを下げ、更年期障害の症状も和らげます。
おすすめの大豆製品…きな粉、豆乳、納豆、豆腐
生理痛を緩和する飲み物
ジンジャーティー
ジンジャー(生姜)にはジンゲロールとショウガオールが含まれていて、その成分が血行を良くし体を温めてくれます。
ローズヒップティー
ストレスが多い人は体内のビタミンCが消費されやすく、生理痛の悪化にもつながります。
ローズヒップには、ビタミンA.B.C.D.E.Kなど様々なビタミンが含まれており、なかでもビタミンCが多く含まれています。ビタミンCにはストレスや疲労感の軽減、美肌効果、利尿作用があり生理中の肌荒れやむくみも予防します。
カモミールティー
カモミールには胃腸の働きを促し、気分をリラックスさせる効果があります。また、ホルモンバランスを整える作用がありますので、生理痛や冷え症の改善にも効果があります。
夜に飲むとぐっすり眠れる効果もあるので、生理時期の日中のひどい眠気に悩む方にもおススメです。
ペパーミントティー
スーッとする成分はメントールによるもので、清涼感を得られ、生理痛やストレスを緩和してくれます。また、頭痛や鼻炎の改善にもなります。
ココア
ココアに含まれるマグネシウムは、自律神経を整えてくれる働きがあります。そのため、血行が良くなり冷えも改善してくれます。また、鉄分の吸収も優れているので貧血予防にもなります。ただし、微量にカフェインが含まれているので飲みすぎは禁物です。
豆乳
豆乳には大豆イソフラボンが含まれています。大豆イソフラボンにはエストロゲン(女性ホルモンの働きを促す)という成分が含まれています。たんぱく質も豊富ですので、生理痛以外に生理不順や貧血にも効果が期待できます。一日の摂取上限量が一日70㎎と言われていますので飲みすぎには注意が必要です。
麦芽飲料
麦芽飲料は、発芽大麦を使用した飲み物です。麦芽は冷え症や冷えに良い漢方として知られています。消化を促進し、胃腸の働きを正常にしてくれます。
夏の暑い時期などは冷たい飲み物を飲みたくなりますが、甘いジュースなどには、体を冷やす作用のある白砂糖がたくさん含まれており、生理痛を悪化させる要因となりかねません。どうしても冷たいものが飲みたいときは、ミネラルウォーターやノンカフェインの麦茶を飲みましょう。
生理(月経)月経困難症とは
生理前や生理中、下腹部や腰のひどい痛み、頭痛、吐き気やめまいで毎月寝込んでしまう、痛みのために家事もできず、仕事にも行けない、そんな日常生活に支障をきたす生理痛を「月経困難症」といいます。
器質性月経困難症:病気が隠れている月経困難症
20代後半から多くなります。月経痛をはじめとする症状は、月経初日~3日目ごろを過ぎても続き月経期間以外にも痛みが生じることもあります。
考えられる原因…子宮内膜症、子宮腺筋症、子宮筋腫など
機能性月経困難症:原因となる病気がない月経困難症
考えられる原因…子宮の収縮を促す物質「プロスタグランジン」の分泌量が多い、子宮や卵巣が未成熟、骨盤のゆがみ、冷え、ストレス、生活習慣など
痛みの感じ方には個人差があり、普通の生理痛と月経困難症の線引きは難しいもの。 ただ、今までとと違う強い痛みが何カ月も続いたり、どんどんひどくなる場合は、子宮や卵巣の病気の可能性もあります。そんな時は、決してがまんをしないで、婦人科を受診してくださいね。